やなか chic

20031026

町人のママ

歴史を受け継いでくれる人募集します。

名店ひしめく谷根千エリア、その中にあって特に夜、異彩を放つ居酒屋が三崎坂を登り切った左側にあります。昼間見るとボロボロの店構えですが、夜になってあやしく揺れる赤提灯に火が入るとその面構えは一変します。怪しげな、それでいてなんとも懐かしいにおいが漂ってくるのです。

入口の破れた障子の前で「入っても大丈夫かな?」と思わせるほど独特の雰囲気に圧倒されますが、中から漏れてくる楽しげな客の笑い声につられて、そ〜っと障子を開けると、そこにはまったく不思議な世界が広がっています。

居酒屋「町人」の世界と時間です。

中に入ってしばらくすると、暗めの照明になれてきた目に色々なモノ達が飛び込んできます。すすけて茶色くなったバービー人形、鋳鉄製の井戸のポンプ、道路標識、ランドセル、鎌、時計・・・・一見すると雑貨屋のようにも見えますが、何気なく、かざりっけなく置いたり掛けたりぶら下がったりしているモノ達からは一貫した何かを感じます。騒然としているのに静かで落ち着いている不思議な感じです。

町人は今年で創業27年、その間にママが芸大際のフリーマーケットなどで買い集めたモノ達は、町人のインテリアであり、ママのアート作品であり、四半世紀を越える歴史でもあります。

店も独特なら、それを切り盛りするママも負けずに個性的です。「昔はもっとスラーとしていて、ミヤケとか、なんだとかってドレスを着たりしてた時もあったのよ〜」なんてたまに昔話をしてくれますが、今の服装からはちょっと想像しがたい(失礼...)

まず、頭にのっけているのはテーブルクロス、エプロンの紐はネクタイ、それぞれきちんとした理由があっての工夫です。「ネクタイは幅が広くて肩が凝らなくてちょうど良いから、ちょうど使わないのがあったしね」「手拭いをかぶっちゃうと大掃除みたいでしょう?これならちょっと飾りもあってね」

でも根底にあるのはモノを大切にしようという当然の思いなのです。あまりに当然の事なのでママの中では理由にはならないのかもしれません。だからこそ、普通に考えれば「えっ」っていう感じが全くなくて、素敵に見えるのでしょう。

人や物や大切にしなければいけないことを大切に思って生きている温かい感じが人柄からも料理からも感じられます。

ママがお店を始めたのは、芸術家だった旦那さんを少しでも支えられるようにという一途な思いだったそうです。27年前、谷中は飲食店を開くような場所ではなかったのですが、旦那さんと散歩している時に、選挙事務所になっていたこのスペースを見つけて、即日店を出す事を決めたそうです。その決め手はまわりの街並みにあったと言います。

それから四半世紀、たくさんの芸大生やお坊さんの学生達がお世話になったママの味もまた独特で癖になる旨さです。町人豆腐、おいらん焼、梅入り焼ソバ・・・ご存じの方はメニューを聞いただけで食べたくなるのではないでしょうか?かくいう私も、ついついノリがたっぷりかかった焼きそばを食べに通ってしまいます。

今、町人のママはとっても困っています。旦那さんの病気の具合が悪くて、看病とお店の両立が辛くなっているのだそうです。かといって常連さんが足繁く通うお店をたたんでしまうのも忍びないし・・・色々悩んだあげくの結論が、町人の空間と味と歴史とお客さんをそっくりそのまま受け継いでくれる人を募集することでした。専門用語で「居抜き」というそうですが、条件は以下の通りです。

・谷中は近所付き合いが大切な場所です。ご近所を大切にしてくれる方。
・初期投資分の資材(インテリアと冷蔵庫・特大のクーラー等の設備)を買い取ってください。
・大家さんには相当の保証金を支払ってください。
・できれば今の町人の雰囲気を受け継いでくれる方。
・通りに面した1階、面積9.5坪、トイレとちょっとした裏庭付き。25人くらい入れます。
・千代田線千駄木駅から徒歩10分、JR日暮里駅からも同じくらいです。

様子見がてら遊びに来てください。お問い合せは下記までお電話でお願いします。僕ら常連組にしてみれば、そんな事言わないで頑張ってよ〜なんて無責任なことを言いがちですが、ママと旦那さんの為にも素敵な人が受け継いでくれると嬉しいな〜と思っています。


『居酒屋 町人』

JR日暮里駅から谷中霊園を経て徒歩10分
地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩で10分

お気軽にお問い合せ下さい
・台東区谷中5-2-1
・03-3824-4915(PM6:00〜12:00)
(日曜・祭日はお休みです)


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endou@yanaka.com